“into the glass” for AGC studio, Tokyo (2010)
into the glass (2010)
作品タイトルは《into the glass》。様々な人々がガラスに込めた思いを、この展示を通じて感じてもらえるように、という願いを込めてつけたものだ。
僕のここでの試みは、音楽や光による演出を添え、ご来場いただく皆様への「おもてなし」。「機能性と美しさ」を兼ね備えたガラス本来の在り方は、ただそれだけで美しい。そこにほんの少しだけ彩りを加えより華やかな「美=beauty」を、そして音楽による「感情=emotion」を加えることで、これまで気づかなかったような、新しいガラスの魅力を知るきっかけになればと考えて取り組んだ。
整然と、無駄のない佇まいで仕上げられたガラス達は、見た目からその性能の差を知ることは難しい。このAGC studioでは、世の中のニーズに応え開発された、様々なガラスやそれに付随する技術が紹介されている。それらの製品や技術は、ガラスそのものの存在と変わらず、決して主張することなく、そっと我々の暮らしを支えてくれている。
実際に、ここで体感できるその成果を目の当たりにすると、ガラスの性能向上を目標に、これまでにない「機能=function」を与えるため、日夜「情熱=passion」を注がれてきたAGCの皆さんの思いを感じ取ることができるはずだ。 我々は、長い間、ガラスと共に暮らしてきた。今や、空気と同じレベルといえるほど、当たり前の存在すぎて、気にも留めないかもしれない。部屋と屋外との境界線にはガラス——厚い壁で外壁を覆わなくとも、風雨を遮り、かつ最適な室温を保ちながらも、屋外から光を取り込む(記憶に残る窓越しの風景も数知れない)。街を歩けば、そこは巨大なガラスの空間——ビルの外壁に設えられたガラス群に自分の姿が映し出され、己の存在を実感。その他、テーブルやイスをはじめとするインテリアやアクセサリー、携帯電話や電子端末といった身近なところに至るまで…ガラスは、その存在を主張することもなく、そっと、いつもそばにいるのだ。
これからそう遠くない未来に、今では考えも及ばなかったガラスとの関わりを持つ日もやってくるに違いない。それはきっと、我々の暮らしを豊かにすると同時に、いつかみた、記憶に残る窓辺からの風景と同じように、暖かく穏やかな記憶として、いつまでも心に刻まれることだろう。
そんなすぐそこの未来に思いを巡らせに、AGC studioに訪れてもらえたら幸いである。
beauty into the glass
emotions into the glass
functions into the glass
passion into the glass
memories into the glass
ガラスの中に閉じ込めた数えきれないほどの思い——into the glass
川瀬浩介 2010年12月